雑木林を縫う道を行くと急に明るくなり、安達太良の峰々が目前に迫ります。古代の円墳を思わせる丘に、展望楼(六角形の東屋)が建てられています。360度見事な景観が広がっているため、近年では撮影スポットとしても人気が高くなっています。
天狗塚には、力自慢の天狗が安達太良山からこの岩を投げたという伝説が残っています。
天狗の力自慢
昔、安達太良山(あだたらやま)に一人の天狗が住んでいました。この天狗はとても力持ちで、大きな岩をかついであたりの山の峰(みね)から峰へとひょいひょい飛び歩いていました。
「おれはこのあたりでは一番力持ちだと思うんだけんじょ、なんとかためしてみる方法はねえべかなぁ」
天狗はあるときこう考えて、知恵者(ちえしゃ)の天狗友だちに相談してみました。すると、知恵者の天狗は、じっと空ゆく鳥を見つめながら、なにやらぶつぶつ言っていましたが、
「うん、そうだ。それには力だめしが一番いい。このあたりの天狗たち、みーんな呼び集めて、力試し大会をひらくんじゃ」
「へぇー、力だめし大会ねぇ、それはいい」
力持ちの天狗は大喜びです。
「安達太良山の頂上から石を投げ、一番遠くへ飛んだものが一番力持ちということにしよう」
さて、いよいよ力だめし大会の日です。このあたりの近在(きんざい)の天狗はもちろん、遠く、月山(がっさん)や古峰山(ふるみねさん)あたりの天狗たちもおおぜい集まりました。その数は百人もいたでしょうか。安達太良山はたくさんの天狗たちで大にぎわい。見るからに強そうな太った天狗もいれば、やせて目ばかりギラギラしている天狗もいます。でも天狗たちはみんなわれこそはと自信まんまん。
いよいよ力だめし大会がはじまりました。
まんまるの石をふりあげて「えいやーっ」と投げる天狗。やりのような細い石をひょーいと投げる天狗。みんな、なんとか遠くへ飛ばそうと一生けんめいです。でも、丸い石はころんころんところがって近くの村へと落ちていきました。 細い石は、風にあおられて、へらへらと落ちて野原につきささってしまいました。他の天狗も、それぞれに工夫をこらして投げました。
さて、いよいよ最後に安達太良山の天狗の番になりました。
安達太良山の天狗は、一番大きな石を持ち上げました。
「えっ、あんなに大きな石を投げるのかい」
「あんな重い石は遠くへ投げられねえべ」
みんなはおどろいて、息をころして見ていました。
「えーい、やっの、とぉーっ」
安達太良山の天狗は、かけ声もろとも大石を投げました。その大石、飛んでいくわ、飛んでいくわ、いくつかの村をこえて飛んでいき、見えなくなってしまいました。
「わーっ」 「ひえーっ」 「すげーぇ」
天狗たちは、空へと飛び上がりました。たくさんの天狗が空を飛び、石の落ちたところを探しました。
「おーい、あったぞーい」
「わぁ、こんなところまで飛んだんだ」
それは安達太良山からいくつも山を越えた初森というところの小高い丘の上でした。
天狗たちは、みんなその石のまわりに集まって、安達太良山の天狗をほめました。そこからは、安達太良山がよく見えました。安達太良山の天狗は、しみじみと言いました。
「みんな、ありがとない。わしは、はじめて自分の住んでいる安達太良山を遠くからながめることができた。何と美しい山なんだべ。ここは安達太良山がほんとうによく見えるわい。みんなぁ、今日はここでさかもりやんねがい」
「さんせい、さんせい」 「やっぺ、やっぺ」
天狗たちのにぎやかなさかもりが始まりました。安達太良山にしずむ夕日、美しい夕やけの中で、天狗たちのさかもりはにぎやかに続いていました。
今でも初森に、「天狗塚」と呼ばれる大きな石があり、ここからは安達太良山の美しい姿が見られます。
アクセス | 下記の地図参照 |
住所 | 〒964-0303 福島県二本松市初森 |
営業時間 | 特になし |
電話番号・お問い合わせ | 岩代観光協会
TEL:0243-55-2111
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備 考 | 敷地内に公園があります |